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使い切られなかったリップクリームの為の特別な場所。

ここ数日、唇が乾く。
唇が乾くのでリップスティックを塗ろうと思って鞄を探したけれど見当たらない。
僕はスキンケアとかなんかそういうことは一切してなくて、でも唯一リップクリームだけはマメに塗るので常に持っているのだけれど、どうも見当たらない。
思い返してみても、どうもなんだかいつも使い切れずに無くしている気がする。

世界のどこかに使い切れなかったリップクリームの為の特別な場所があればいいな、と思う。
きっと世界のどこかには使い切れなかったリップクリームの為の特別な場所があると思う。

そこでは、使い切れずに無くされたり捨てられたりそのまま放置されたリップクリームが集まって、リップクリームとしての天寿を全うするのだ。
どんなリップクリームもきちんと最後まで、とても潤った唇に(あるいはとても乾いた唇に)適量を適切な周期で塗られ、最後の最後まで塗り切って、使い切られるのだ。
どんな理由で使われなくなったどんなリップクリームも、そこでは平等にリップクリームとして扱われ、リップクリームとして使い切られるのだ。
どんなリップクリームでも最後まで綺麗に使い切られ、自分がリップクリームとしての人生を(リップクリーム生を)全うできたことを誇りに思い、リップクリームに生まれた幸せを噛み締め、そして次に生まれるならまたリップクリームになりたいと、心からそう思いながら最後のひと塗りをされるのだ。
もちろんそこではもリップクリームのキャップも無くされることも落とされることも蹴飛ばされることもなく、もちろんケースも同じように丁寧に扱われ幸せなキャップ生を(ケース生を)約束されているのだ。

世界中のどこかにはそんな場所があるはずだし、あるべきだし、それくらいの優しさが世界には存在しているといいなぁ、と思います。
そこではきっと使い切られなかったリップクリームの為に従業員が24時間体制で使い切られなかったリップクリームのことだけを考えた非人道的な環境でこき使われているのだろう。
彼はきっと死んだような目で毎日毎日朝から晩まで唇に使い切られなかったリップクリームを塗るのだろう(もちろん少しでも嫌々な感じで使い切られなかったリップクリームを塗ると上司から怒号が飛ぶ)
なので、世界のどこかには使い切られなかったリップクリームの為の特別な場所でこき使われている人の為の特別な場所があればいいと思う。
そこでは使い切られなかったリップクリームの為の特別な場所でこき使われている人が、使い切られなかったリップクリームの為の特別な場所でこき使われていてよかったと思えるように、24時間体制で使い切られなかったリップクリームの為の特別な場所でこき使われている人をサポートする体制が整えられているのだ。
もちろんそこでこき使われている使い切られなかったリップクリームの為の特別な場所でこき使われている人の為の特別な場所で働く人の為の特別な場所も世界のどこかにはあるはずだし、あるべきだし、それくらいの優しさは世界に存在して然るべきなのだ。